オーロラで世界一位を撮った写真家が教えるオーロラ撮影マニュアル
こんにちは、横田裕市(@yokoichi777)です。
3ヶ月間撮ってきた体験からまとめたアウトプット
フィンランド・ラップランドで過ごした3ヶ月間撮れるタイミングがあればずっとオーロラを撮っていたので、その時の知見をまとめました。
これまでフィンランドのトークショーなどでもお話してきた内容です。
オーロラは日本語では極光、フィンランドではノーザンライツと呼ぶのが一般的でしたが、まぁオーロラかノーザンライツで通じると思います。
撮影地としては、フィンランドのラップランド地方以外にも、カナダのイエローナイフ、アラスカ、アイスランドなどが有名です。
オーロラ3部作でipa2016部門優勝
私事ですが、フィンランドの旅から帰国した2016年、ipaという世界的な国際フォトコンテストにおいて、下記のオーロラ作品がプロ部門ネイチャー部門優勝を達成しました。
そんな撮影者が語る、オーロラ撮影マニュアル
なんてだいぶ偉そうなこと書いてますが、オーロラ撮ったことある方からすればさして難しいことは書いてないです。この点さえ押さえて撮影に臨んでもらえれば、あとは現場でがんばれ!っていう内容です。
実際にこの内容を、イエローナイフに初めてオーロラ撮影に臨んだ友人に事前に共有したところ、見事なオーロラを撮ってきてくれました。私も嬉しくなりました。そのオーロラ作品で彼は今年のipaで佳作をとっています。
以下、いくつか書いてますが、もし気になることあればコメントなどで質問いただければできるものは回答しますのでお気軽にどうぞ。
有益なQAについてはおってnoteに追記します。
前提条件
氷点下マイナス10〜30度の世界で撮影してきた現場での話です。
服装などもそれに準ずる案内になっています。
おすすめのカメラ
・デジタル一眼レフカメラ
・ミラーレス一眼カメラ
カメラのセンサーサイズがAPS-C、フルサイズ、(更には中判)あたりのカメラが良い。星景写真同様に夜の光が少ない中での撮影が中心のため高感度耐性に優れている性能を持つボディだとなお良い。
ダイナミックレンジの性能でいうとシャドウに強いSONYのカメラ使いやすいです。
バッテリーの持ちについては圧倒的に一眼レフに軍配が上がりますが、個人的には撮影時の操作性能ではミラーレス一眼がとても撮りやすかったです。
ちなみに単なる記録写真程度なら、今どきのスマートフォンのカメラ性能なら撮れないこともないです。
主なカメラ設定
フォーカス:マニュアルフォーカス
ピント位置:およそ無限遠
F値:基本は最小値
ISO:800〜1600
(月明かりもない闇夜の時 1600~3200)
シャッター速度: 1~15s
(月明かりもない闇夜の時 20~30s)
画角 :10mm~24mm
おすすめレンズ:
ズームレンズ 16-35mm、12-24mm
上記画角内の広角単焦点レンズ
実際に使用した機材(2015.12-2016.3)
Canon EOD5Ds,Sigma 12-24mm F4.5-5.6IIDG HSM
SONY α7SII, 16-35mm F4 (SEL1635Z)
フォーカス
基本的にフォーカスはマニュアルで星景写真同様に星に合わせます。
なるべく明るさを担保するためにF値は最小あたり。
ISO
月明かりや街の光害などの夜の明るさのコンディションによってISOをコントロールします。
シャッタースピード
オーロラは毎回動く速度が異なるため肉眼で動きを観つつ、シャッタースピードを調整します。オーロラの動きが速い際に、シャッタースピードを長くとってしまうと、繊細な光の動きを撮ることができず単に太い光の帯に写ってしまいます。
動きが速いオーロラの場合→ISO上げつつ、シャッタースピード速く
動きが遅いオーロラの場合→ISO下げつつ、シャッタースピード遅く
レンズ
オーロラは夜空に広範囲に発生するため、基本的に広角レンズが良いです。
単焦点レンズの方がF値低くできるのでおすすめですが、今のカメラ性能ではF4のズームでも十分に撮影が可能です。実際、フィンランド滞在中のオーロラは全てズームレンズで撮影しています。
シャッターボタンの設定
ボタン1つでシャッターを切れるようにしておく
カメラは操作しやすいようにしておく
これはオーロラだけ撮っている際には問題ないかもですが、寒冷地で撮影していてあまりの寒さのあまり手が凍傷になりかけた事があるのですが、操作を簡易的にできるようにしておくと良いです。(例えば普段親指フォーカス使ってる人は通常の半押AFに戻すとか。ちょっとマイナーかも)
寒冷対策グッズについて
こちら自身の経験に基づくもので、あまり参考にならないかもしれませんが一応。
レンズヒーター
レンズを温めておくことで温度変化を抑制し結露を防ぐアイテム
あると便利だと思います。(ちなみに自身は使用経験なし)
温度差のある出し入れをする際に気を付けていれば不要かなと。
カメラカバー
カメラをまるごと包み込むカバーですが、実際買っていったものの、操作性が著しく損なわれるので結局一度つけただけで以降使いませんでした。
大雨の中の撮影とかで使うなら良いかも。氷点下の雪には不要でした。
結論なくてもちゃんと準備と対策打てば大丈夫という話なんですが。
カメラのバッテリー
1.ホッカイロと一緒にポーチに入れて温めておく
氷点下の世界では圧倒的にバッテリーの減りがはやいです。
使用する直前まで使う分のバッテリーもホッカイロと一緒にポーチに入れて温めておくと良いでしょう。この辺のバッテリーの持ち具合では一眼レフの方がバッテリーも大きい分長持ちします。ミラーレスの方はバッテリーも小さいので持ちについては前者にはかないません。
2.予備バッテリーは2〜3個あると良い
消耗が激しいので入念にオーロラを撮りたい方はバッテリーの予備は豊富に用意しましょう。その方が安心です。またUSB給電が可能なカメラならモバイルバッテリーを用いた充電しながらの撮影もできるのでUSB給電機能は寒冷地で長時間撮影する際に大活躍します。
外気と室温の温度差への注意
ホテルや車内の温度と、屋外の氷点下の温度差で機材内部に結露が発生しやすい状態になるので注意。
撮影前
ホテル部屋内の暖房のそばに置かない
クローゼットの中など暖かい場所を避けるのが理想
撮影後
SDカードはホテルに帰る前に抜いておく。部屋に戻ったらクローゼットの中などにカメラバッグごと数時間おいておく。部屋に戻りすぐにカメラを取り出すと、室温の暖かさで機材内部に結露が生じます。
服装について
基本的にはウィンタースポーツをしに行く時に着るようなウィンターアウトドアウェアを着用して撮影に臨んでいました。しっかり冷気を遮断しましょう。実際フィンランドでお世話になったのはHALTI(ハルティ)というフィンランドで有名なブランドのウェア スポンサードして頂きました。
帽子は必須
頭から体温が逃げますので帽子は必須です。何個も持っていました。
顔〜首元
ネックウォーマー的なやつもあると良いです。薄手のネックウォーマー的なアイテムで鼻まで覆うことで顔を守ります。鼻の頭が凍傷になったことがあるんですが、これは鼻の頭が冷え切ったカメラのディスプレイに接触していることで起きていた凍傷でした。これを防ぐために鼻まで布で覆う必要があります。もしくはカメラに顔をつけない。
手袋
カメラはもはやドライアイスのようなものです。素手で触るなんてことはやめましょう。薄手のグローブ、厚手のグローブ、重ねてレイヤーとしてつかえるものが良いです。後述している映像にも映っていますが毛皮の手袋は最強にあたたかいです。
足元
靴下はウール素材のものがあたたかくて良いです。寒い時は2重に履いていました。靴も寒冷地用の厚手の靴が良いです。靴下を重ね履きするのも考慮してサイズ大きめ。足元は靴の基本性能と靴下でしか守ることができないので、これを超える寒さに遭遇した場合、つま先から凍傷でやられます。
寒くなったらヒゲダンス
当時バスった動画ですが、ヒゲダンスをすることで血流が良くなり身体が温まります。超絶大事です。ヒゲダンス。
温かい飲み物は薬だと思え
コーヒーやホットチョコレートなどの身体を温める飲み物は薬だと思ってください。超重要。チョコレートなどの糖分も必要。
オーロラ撮る際にお世話になったサービス
オーロラの天気予報みたいなもんです。だいたいオーロラの強さとか出る範囲が分かります。
撮影地について
基本的には星景写真を撮る場合と条件は同じです。
空が広い場所へ
基本的に空が開けた空間が広い場所を探しましょう。空が狭いと広大なオーロラを撮るのが難しいです。
光の少ない場所へ
光害の影響を受けるため街や街頭など人工的な光がないエリアへ行って撮るのが良いです。あえて人工的なオブジェクトと一緒に構図に入れて撮りたい場合は別。
オーロラにフォーカスした映像もあります。
フィンランドのプロジェクトでオーロラ撮影について私が語っている映像です。
実際に撮影した作例と設定値(レタッチ済)
ロヴァニエミの市街地上空に出たオーロラ
初めてのオーロラ遭遇で無我夢中で撮影。月は出てなかったですが街の明るさもあり、今撮れるならもう少しISO上げてシャッタースピードを速くしたなと思います。これは15sでちょっと長かったですが、うまい具合に光の流れが残ってくれました。
これはオーロラ撮影ではハズレな方。期待して山登りしたんですがあまり良いオーロラは現れず。遠くに街の光害がありますが、暗い現場でISO2500まで上げ8s 撮影する仲間との様子を撮りました。
これはipa受賞3作の1つでもあるイナリ湖で撮った作品
オーロラの動きが活発だったのでISO高めで6s
オーロラ単体よりか、オーロラの色、星空、光害の「空の3色」をとらえた一枚です。ISO5000まで上げて20sでやっとこの明るさという。
イナリ湖・湖畔にてぼんやり浮かび上がったオーロラと、ガイドさんの別荘、テントの灯りといれた縦構図。なんとも不思議な感じに撮れた1枚
ムオニオという地域で撮影した3枚。この日は月夜の晩で明るかったんですね。ISO800とかで地上もくっきり写っています。オーロラ自体は弱い日でしたが、オーロラドームというタイプのホテルと撮れたカットです。
オーロラの動きが最高潮に活発だった時のカット。
3.2sで翼のような描写が撮れました。シャッタースピード速くするためにISO上げています。
これはシャッタースピード遅くしすぎたパターン。20sでぼんやりしたオーロラになっています。
この時も動きが活発。かつそもそも帯が太くて6sでもこんな絵に。
1つ前の写真と同じ現場でのカット。4sにしてもこのオーロラの動きではこのように撮れたのかと。手を伸ばしたパーツセルフィー
ほぼオーロラが消えかかっている時にむりやり撮ったセルフィー
リーシトゥントゥリ国立公園内で撮影。遠方にオーロラが出ていたためその光をいれつつ樹氷と星空〜オーロラのグラデーションを写した作品。
同じく公園内にてセルフィー。薄く1本のオーロラの筋がでていたので20sでなんとか撮影。樹氷がほんとに素晴らしかったです。
これは偶然にも8s仲間が棒立ちだったので撮れた1枚。人との対比ができたレアな
月明かりのある夜。この時はシャッタースピードながめ。
ほどんどはグリーンが多いんですが珍しいパープルのオーロラ。
オーロラの色は出現する高度で決まります。パープルは上空100km前後、一番高度が低いオーロラの色です。
月明かりの夜。穏やかなオーロラの動きと明るさもあっての
ipa受賞3作の1つ、部門優勝へ導いてくれた自分のベストでもあるオーロラ作品。ケトメラという地方で撮影。
この日は「オーロラストーム」と呼ばれる数時間かけて激しいオーロラが吹き荒れる貴重な夜でした。
月明かりと激しい動きがあってわずか3.2秒の軌跡。オーロラの描写も構図も全てがパーフェクトだった1枚です。
これはGoProでインターバル撮影したオーロラストームを合成して一枚にまとめた作品です。Goproでも十分良い仕事してくれます。
ちなみにGoProは本体が小さいためバッテリーも貧弱です。大容量のモバイルバッテリーを接続した状態で給電しつつ雪の中に設置して撮影しました。
ポシオにあるコロウオマ自然保護区にて撮影。突如巨大なオーロラが現れ、慌てて撮ったのを覚えています。13sはちょっと長すぎました。
ipa受賞3作の1つ。同じくコロウオマ自然保護区で撮影。ここではどうしても右下のアイスフォール(氷瀑)とオーロラのコンビを撮影したかったのでドンピシャ。夜空に光のアニメーションが描かれていくようなすごい動きで、この時は25sで撮って正解でした。じゃないと動きを撮りきれなかった。
これはコロナ型というタイプのオーロラです。
オーロラは宇宙の神秘
オーロラは平たく述べると、太陽から地球に吹く太陽風(プラズマ)が地球の磁場に干渉し大気中の粒子と衝突することで起きる発光現象なんですね。
オーロラは出会える運と他に、現場での即時対応力が問われる被写体のため難しいですが、とても撮りがいがあります。素敵なオーロラに出会い、良い写真が撮れますように。
フィンランドでの冒険については下記にまとまっています。
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改めて自分のレタッチビフォアアフターを見ると、かなり暗め(アンダー)で撮れていてRAW現像に助けられているのですが、当時はVSCOなどの既存プリセットなども用いておらず基本的な補正しかしていません。
当時よりグレードアップした今手元にあるメイン機材SONY α7RIII、SONY12-24mmF4,Batis18mmf2.8と、現在のレタッチスキルがあればどんなオーロラ撮れ、仕上げることができるだろうと、次のオーロラ撮影はまだ未定ですが、未来の楽しみの一つです。
以下のおまけパートは、上記の作例から10枚、Lightroomの設定値と現像前・現像後のビフォアアフターのスクリーンショットを載せてますので気になる方は御覧ください。
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